少し跳ねた短い髪、高い身長、がっしりとした体格。月明かりを切り取ったような、濃い影。そして、よく通る少しだけ低めの声。向こうにいるのが誰か、というのは、考えなくても分かることだった。
膝の上に乗せていた刀を下ろす。一瞬、この部屋に招き入れるべきか迷って、しかし断る理由も思い浮かばず、そのまま立ち上がった。
「楽紗、どうしたのこんな時間に」
名前を呼びながら、障子を開く。思った以上に自分の声が掠れ、少しだけ強く息を吐いた。
すう、という桟が敷居を滑る音とともに訪問者を迎え入れる。立っていたのは予想通りの人物で、けれど予想と違っていたのはその表情だった。
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