大食一族 久遠の詩

俺屍リメイクをプレイします

光年先の未来③

人の目がある。人の声がする。それらには興味と好奇心と少しばかりの恐怖と、そして期待が含まれている。権力を持つものと持たないもののがまぜこぜになっていて、一人倒れるたびに悲鳴のような歓声のようなものが響き渡る。足場はしっかりとしていて、蹴り上げても踏み込んでも崩れることはない。精々、足元で細かい砂埃が上がるだけだ。鬼の臭いも血の臭いもずいぶんと薄い。なにもかも、勝手が違う。
選考試合、人相手の戦いとはこういうものなのかと、戦いながらぼんやり思った。

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光年先の未来②

長く悩んだ。長く、長く悩んでいた。だから、話は長くなる、と思っていた。
けれど、楽紗が交神に赴くこと、そしてそれは彼女から持ちかけられた話であったこと、ねえさまの血を確実に継いでいきたいと思っていること。その三つが家族に受け入れられるのはあっという間で、皆が一様に「当主様と楽紗が決めたことなら」と、反論もなく納得してくれた。

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光年先の未来

少し跳ねた短い髪、高い身長、がっしりとした体格。月明かりを切り取ったような、濃い影。そして、よく通る少しだけ低めの声。向こうにいるのが誰か、というのは、考えなくても分かることだった。
膝の上に乗せていた刀を下ろす。一瞬、この部屋に招き入れるべきか迷って、しかし断る理由も思い浮かばず、そのまま立ち上がった。
「楽紗、どうしたのこんな時間に」
名前を呼びながら、障子を開く。思った以上に自分の声が掠れ、少しだけ強く息を吐いた。
すう、という桟が敷居を滑る音とともに訪問者を迎え入れる。立っていたのは予想通りの人物で、けれど予想と違っていたのはその表情だった。

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