1024年7月 白骨城続き
…続きます。
残りの炎は、この時点で三つありました。
捨丸戦は泥仕合も泥仕合だったので、正直もっと、時間も、そのほかのものも消耗している気がしました。しかし手持ちの技力回復アイテムを使えば、全く問題なく、全快。
全快、してしまったのです。
一歩、足を踏み出しました。
今、大食一族に、天界に不信感を持っている人間がいるか、考えました。
折しも氏神を輩出したばかり。討伐隊にはその、氏神になった人の、娘と息子がいるのです。
黄川人が言った「安らかに眠ることも叶わず、無限に続く悪夢の中を彷徨い続けている」。これは、天に上がった二人のことを指しているのではないのか。なら、その判断は正解だったのか?
錦さまは、そう思ったでしょうか。
足を、進めてしまいました。
ひときわ禍々しい気配。髪戦に突入です。スロットは…
時登りのバックはなし。でも養老水がきた!
初手は…
安定のきりえちゃん。さぁ、戦い方は同じです。相手は壱与姫で回復してくる。魂寄せはまだ取れていません。くららが決まればあるいは。でも、どちらにせよ消耗戦になる。それは、分かっていたのです。
白鏡を回したところで、気づきます。
…宝鏡の在庫が、もう少ない。もみじくんは、白鏡を、使えない。
プレイヤーの悪手①、黒鏡。勝算もなく打つものじゃなかった。次のターンで、列攻撃が飛んできました。当然のように、後列へ。
錦さまは、きりえちゃんをコピーしていました。しかし、もみじくんがモロに食らい、
円子、もしくは春菜がほしいプレイヤー。春菜をお願いしました。その後、もう一度後列に、攻撃が。
きりえちゃんのみ、無傷。(これはテンパり進言。春菜をお願いしました)
とにかく、鏡に頼らずにバフを重ねようとするの図。
プレイヤーの悪手②、体制が整わないまま、力士水を使ったこと。技力切れを狙わなければいけないのに、ここでバフを急いてしまった。
単発の攻撃が、飛んでくる。
もみじくんが膝をつきました。円子で回復。
ダメージ自体は入っているのです。連撃が入ればなおのこと。でも…
くららが入らない。入りさえすれば、黒鏡も使えるのに。
もみじくんが再び膝を。
回復の直後、列攻撃が飛んできました。
見づらいですが、燕返しが決まっています。さぁ、なんとかして、立て直せ!!!
連撃も入ってるし、
奥義も放ちました。ほかの二人はぽかんとしてたかもしれない。錦さま、自分が奥義を編み出したこと、言うような気がしなかったから。
ここで、壱与姫が。クッソォ……なんとかして突破口を…
もみじくんの鏡が切れていました。鏡を回すと、その分技火が下がる。一回攻撃だ。
錦さまと、不動明の併せを!
大丈夫、落ち着け、攻撃は通ってる。だから、あとは、くららを入れて、金剛変で、黒鏡を回して、それから、
これを考えていたのはプレイヤー。けれど、
画面の中で、錦さまは、考えていたのだと思います。
どうすれば勝てるか。どうすれば、回復されることなく一気に叩けるか。
そして二回、連続で手番を取られました。
考えながらでは、相手が動くスピードに、反応することができなかったのかもしれない。
いや、なにもかもプレイヤーのせいなのだけど。
手汗が、どっとふきだしました。
なぜ、なぜ、なぜ、交神もしていないのに挑んでしまったのか。
血が途絶えてしまう。
一歳二ヶ月。当主。生き残れる可能性はどのくらいだ。どうしよう。どうする。リセット?いいや、それはだめだ。だめだ。どうしよう。
屋敷に、戻りました。
覚悟していました。
けれどね。
屋敷に帰った直後、イツ花が言うんです。
一瞬、プレイヤーの頭は真っ白になりました。
イツ花から、諌められた気がしました。
それはあのとき、きっと一人で考えていたであろう錦さま宛であり、
もちろん、ばかなプレイヤー宛であり。
このタイミングで、このセリフが来るか、こんなことを言ってくれるのか、そう思いました。
……生きてた。錦さまは、生きてました。
手汗が止まりませんでした。嘔吐感もありました。胸がつかえました。でも、錦さま、生きてた………
大馬鹿プレイヤー、ここに極まれり。
もう二度と無茶な行軍はしない。