最終決戦②
それは、ただの悪趣味な光景だった。
どろどろに溶けた壁から、文字通り鎖が生えている。尊厳を毟り取るような態勢で語られた、今まで戦ってきた「鬼」の秘密。赤毛が母、と語るその女性が誰であるかを、わたしは知っている。
下がった目尻、震える口元。そこにいるその人は初代の母、つまりは我々の先祖。黒い髪、はだけた胸元。長く与えられてきた苦痛に歪みきった表情。胃の奥から嫌悪感と不快感が迫り上がってきた。
今まで屠ってきた鬼が、祖を同じとする存在であったという事実が、生臭い空気の中で脳髄をぶちぶちと侵食していく。目の奥があつい。指先が震える。誰も何も言えない。ぶん殴る
と言っておきながら、皆の表情を見ることすらできない。誰かに名を呼ばれたかもしれない。けれどそれよりも。目の前の光景を理解しきることを拒否する本能と、きちんと見て仇をうてという理性が、脳みその中で暴れまわっている。