大食一族 久遠の詩

俺屍リメイクをプレイします

最終決戦④

「た、太照天っ!!」
少し上擦ったひかりの声とともに、四色の淡い光が場を満たしていく。
血腥さと肉肉しさが溢れかえったようなこの場では、何度も見たはずの色をうまく認識することができない。ちかちかと明滅するそれらと、息子が術を唱える音に身を任せながら、ただ手の中の弓を握り込む。落ち着け、落ち着け、と頭の中で繰り返し、短く息を吸って腹に力を込めた。

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最終決戦③

右、後方、左右、左、後方、目の前。
赤毛の姿が見えないまま、こちらを嘲る声だけが響き回る。
眼球だけを動かして回りを見る。武器を手放している者はいない。びりびりとした空気、全員が当たり前に臨戦態勢で、自然と四人、背合わせになりながら気配を探る。
血泥になって跡形もなく消えたはず。なら、今この声はどこから聞こえ、声の主である赤毛はどこにいるのか。
いいさ、どこからでもかかってこい、と思いながら、矢筒に手を伸ばす。
けれど。
直後。
攻撃を受けたのはわたしたちではなかった。

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最終決戦②

それは、ただの悪趣味な光景だった。
どろどろに溶けた壁から、文字通り鎖が生えている。尊厳を毟り取るような態勢で語られた、今まで戦ってきた「鬼」の秘密。赤毛が母、と語るその女性が誰であるかを、わたしは知っている。
下がった目尻、震える口元。そこにいるその人は初代の母、つまりは我々の先祖。黒い髪、はだけた胸元。長く与えられてきた苦痛に歪みきった表情。胃の奥から嫌悪感と不快感が迫り上がってきた。
今まで屠ってきた鬼が、祖を同じとする存在であったという事実が、生臭い空気の中で脳髄をぶちぶちと侵食していく。目の奥があつい。指先が震える。誰も何も言えない。ぶん殴る
と言っておきながら、皆の表情を見ることすらできない。誰かに名を呼ばれたかもしれない。けれどそれよりも。目の前の光景を理解しきることを拒否する本能と、きちんと見て仇をうてという理性が、脳みその中で暴れまわっている。

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