大食一族 久遠の詩

俺屍リメイクをプレイします

すすむことができるなら④

帰宅してすぐ、足に力が入らなくなった。
玄関先で動けなくなってしまったことがこれ以上なく情けなく、しかし涙は出ない。代わりに、胸のあたりに虚があいたような感覚が、ぼんやりと漂っていた。自分一人で動けるからと強がってみても、絶え絶えになる息を吐きながらでは、まるで説得力はなかった。
夢も、むぎも、小町も、表情を歪めながら支えてくれる。半ば引きずられるようにして床へ向かい、枕に頭を預けた瞬間から、ああ、ずるずると力が抜けていく。
そうして意識は一度、そこで途切れたのだった。

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すすむことができるなら③

巨大な墓。
がちゃがちゃと耳障りな音を立てて立ち塞がる、迷宮の大将たちを捻じ伏せる。夢も、小町も、そして娘も、わたしに術をかけ、そしてわたしの力を使ってくれた。己の力が増す奥義は、あの日相翼院で編み出したもの。その力が、全員に渡り、そして助けになっていると思うと、胸に、言いようのない大きな安堵が広がる。昨日の、食事を取る前に感じた目眩が襲ってくることもなく、進む足取りはとても、軽かった。
最奥近く。此処に巣食う一際巨大な鬼の大将は、かつて人であり、家族に裏切られたという。そんな話を、何度か目にしたあの赤毛が言っていた。まるきり信用ならない軽い言葉。あの、逆撫でるような声音。虫酸が走るという言葉を聞いて、しかしわたしたちが歩みを止めることはない。
手入れなどされていないはずなのに、やたら目の整った石畳。なのに、おぞましいほど土埃が積んだ、細かな壁の装飾。嫌でも目に入るのは、場を圧迫するような太い柱。箱に収められた金銭は、この場で眠るかつての人へと供えられたものだろうか。いける、やれる、小さく声を交わし合い、迷宮の奥へ奥へと進んでいく。術の使えぬ空間、闊歩するのは見慣れた鬼。一層暗いその場所で、夢が俯いていたのが見えたけれど、結局、声はかけないままだった。

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