母の声は震えていた
空色の髪を高く結った、小さい女の人が母だと言われた。
もうすぐ鬼の討伐から帰ってくるから、少し待って下さいネ、と言われた。
本当に少ししか待っていないのに、屋敷の門が騒がしくなった。
程なくして、埃と泥でぼろぼろの三人組が、屋敷に転がり込んできた。
母がどの人かはすぐに分かった。
よろしくね!と、笑顔で言われた。
火花が散るような、笑顔だった。
名前は玄にする、と言われた。
職業は剣士がいいと思う、と言われた。
だから剣士になります、と言った。
泥を落とし、櫛を通したであろう髪は、たしかに空を映したようで。
その明るさは、父神の言った通りだった。
玄、と名前を呼ばれたので、そっと母の方へ歩み寄る。
ゆっくりと抱き締められ、それでもその力強さに一瞬、息が止まる。
戦装束から紬に着替えた母からは、お日様の匂いがして。
呟く声は、震えていた。