大食一族 久遠の詩

俺屍リメイクをプレイします

男の記録

 

一〇二四年 二月 討伐前

当主に就任。討伐記録とは別に、月録をつけることにした。こうして状況を書き記しておくことが、この先、決断する場面で判断材料になればと思う。

過去の記録を確認。討伐先と目標を設定した。

紅蓮の祠の奥には、他のものより奉納点を多く蓄えた鬼がいることを、前当主から聞いている。一刻も早く呪いを解くためには、あまり手段を選んではいられないのではないか。

一〇二四年 四月 討伐前

迷宮の中で、月を跨いだ。姉上殿の調子が悪い。あの中で延長の決断をしたこと、悔いているわけではない。しかし、最善の行動だったかと聞かれれば、自分の見識が足りなかったと、今になって思う。こんこんと眠り、動かない姉上殿をイツ花に任せ、討伐に向かう。先に進まなければ。僕にできることは、全てやらなくては。皆の能力を確認。きりえにも、何かが必要だ。

 

一〇二四年 五月 討伐後

初めて行く迷宮で術の巻物を入手。あの人魚が使う水の術は、弱い者が受ければひとたまりもないだろう。あの迷宮に姉上殿や前当主が足を踏み入れなかった理由が分かった。戦果は上々だった。先に進める確信を得た。「どの道も間違っていない」なら、やはり僕は、先に進むべきであるのだろう。一族の悲願成就のために。

 

一〇二四年 六月 討伐前

夏にしか出現しない迷宮。目標は三つだ。先々月、先月と、順調に目標を達成している。今進まずして、いつ進む。今月は、順調に行軍が可能かどうか見極める。

 

一〇二四年 八月 交神前

ようやく筆が持てるようになった。

飯の味が分かる。

何度も夢を見た。

生きていること、そして家族が生きていたことに安堵した。

今月は討伐が難しいだろう。イツ花の、あの申し訳なさそうな表情を思い出す。

もう一度、記録を辿ろう。もう一度、考えよう。

僕は誰に何を頼り、何をすべきだったのかを。