大食一族 久遠の詩

俺屍リメイクをプレイします

つきる②

※グロテスクな表現があります。ご注意ください。


「討伐の刻限までもう時間がないわ。急ぎましょう。この奥に、髪がいるはず」
焦りを滲ませた夢の表情が、炎に照らされている。娘が慌てたように頷き、むぎが誰より早く足を踏み出した。炎は相変わらず踊るようで、熱がじりじりと肌を焼く。けれど、先ほどまでひっきりなしに垂れていた汗が、ただの一滴も流れない。あぁ、いよいよか、と思った。

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つきる①

懐に忍ばせた養老水が、歩くたびにたぷん、と音を立てている。
高温の蒸気が吹き上がる音、溶岩が流れ落ちて地面を焼く音、鬼たちの足音、何かが煮えるような音。家族が話している。気勢を上げる声が祠に響く。これだけ色々な音が同時に脳へと届いているのに、微かなはずの、たぷん、たぷん、という水音は、やけにはっきりと耳に突き刺さっていた。

装束の上から、薬壺を撫でる。
どうか使うことがありませんように、と。
ただただ、祈った。

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